民法が改正されて、保証人制度のルールが変わったと聞きました。中小零細企業の経営者である私たちが注意するべきポイントを教えてください。
2020年8月16日今年の4月1日から施行された民法改正のポイントの一つとして、個人(会社などの法人は含まれません。)が保証人になる場合の取り扱いの変更があげられます。
私たち経営者は、事業を行う上で保証をお願いせざるを得ないケースがあります。
例えば、金融機関からお金を借りる場合や事務所を借りる場合等々
では、今回の民法改正でどのあたりが変わったか、身近なポイントについて、ご説明させていただきます。
身近なポイント① 事業資金を借りる場合
会社や個人である事業主が融資を受ける場合に、その事業に関与していない親戚や
友人などの第三者が安易に保証人になってしまい、結果的に予想もしなかった多額
の支払を迫られるという事態を耳にします。
今回の改正では、こういった事態をなくすために、個人が事業融資の保証人になろ
うとする場合について、公証人による保証意思確認の手続が新設されています。
尚、この手続を経ないでした保証契約は無効となります。
この手続では、保証意思宣明公正証書を作成することになります。これは代理人に
依頼することができず、保証人になろうとする者は自ら公証人の面前で保証意思を
述べる必要があります。
但し、次の場合には、意思確認は不要となっています。
(1)主債務者が法人である場合
その法人の理事、取締役、執行役や、議決権の過半数を有する株主等
(2)主債務者が個人である場合
主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や、主債務者の事業に現に従事
している主債務者の配偶者
身近なポイント② 事務所を借りる場合
事務所を借りるときに連帯保証人を求められることがあります。
社名は言えませんが、コマーシャルでよく見かける不動産仲介会社は、“連帯保証
人は、兵庫県内で働いている成人”等を条件にしており、かつて私は仕方なく友人
にお願いし経験がありますが、連帯保証をお願いするのは気が重かったです。
事務所の賃貸借契約書には、「連帯保証人は、本契約から生じる賃借人の一切の債務を負担する。」と記載されており、「一切の債務って幾ら?」と考えたりしました。
そこで法律用語の解説をしますと、“このような一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約を「根保証契約」といいます。”
今回の改正で、個人が「根保証契約」を締結する場合には、保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ保証契約は無効となりました。
尚、不動産業の所管は国土交通省ですが、同省のQ&Aでは、極度額の表記方法と
して次のとおり記されています。
「~円(契約時の月額賃料の~か月相当分)」
「契約時の月額賃料(~円)の~ヶ月分」、「~ 円」等 |
最後に
今回の改正は、保証人を保護することを目的としており、経営者にとって有利に働
くのか、不利に働くのかは分からないところはあるように思います。
保証をお願いしたときに、「公証人の意思確認の手続まで行うのは勘弁してください。」「事務所の保証はしてあげたいが、●●円の支払責任を負わなければならないのであれば勘弁してください。」と言われるかもしれません。
また、これを機に、保証を求められることが減っていくかもしれません。
しかし、保証を依頼するときはリスクの範囲をきちんと説明し、保証を引き受ける
ときはリスクの範囲をきちんと理解した上で行うことは、今回の改正を抜きにして
も、経営者として心掛けていかなければならないことのように思います。