中小企業の一見非合理なキラーパス!
2020年2月15日
楠木健の「ストーリーとしての競争戦略」は、多くの経営者の愛読書ですが、経営者は「一見非合理」なキラーパスを出す勇気が求められることが書かれています。
アマゾンは、巨大な倉庫を抱えてネット販売を行っていますが、取次が簡単にできるネット販売において巨大倉庫を持つことは馬鹿げていると多くの人は否定的でした。しかし今では、一見非合理と思える巨大倉庫がすぐに配達できる仕組みをつくり、他社と差別化を図っています。
しかし、この一見非合理なキラーパスは大手企業の資金力があるからできることと思っていましたが、昨日、小規模の金属加工会社で一見非合理なキラーパスを目のあたりにしました。
その会社は、加工が難しい単品加工を専門に手掛けています。金属加工を少し説明しますと、加工の段取りに職人技と多くの時間を要し、実際に加工する時間はわずかの間です。
多くの会社が、難しい単品加工を嫌がるのは、段取りの負担が大きく、採算が合わないことが原因です。逆にいえば段取りさえ簡単にできれば採算は合います。
そこで考えたのが、段取りに必要な治具や爪が何百種類も揃え、それを組み合わせることで段取り時間を短縮し、職人技がなくても加工できる仕組みです。
しかし、その仕組みをつくるには、採算が合わない単品加工を何百個も受注し、治具と爪を蓄える必要があります。この期間は、採算が合わない状況が続くことになります。
逆に、それを乗り越えれば、他社はついてこれない状況(ブルーオーシャン)を築けます。この経営戦略は、まさに「一見非合理」なキラーパスといえます。
中小企業でも、「一見不合理」なキラーパスを出す勇気のある経営者は存在するのです。